心理教育・家族教室−私のやり方(4)
大原綜合病院附属清水病院 松本 出
1)現在実施している場所と対象
福島市内の富士病院と、現在私が在職している清水病院にて行っている。富士病院では個別レベルで4家族を対象にしたが、後任医師が家族教室へと発展させている。清水病院では当初から家族教室の形で20-30家族を対象としている。導入条件として当人らが主治医から病名告知を受けていることを前提とし、入院、外来、いずれの患者及びその家族を対象にしている。他院通院中の患者も受け入れている。
2)いつから実施しているか
富士病院では95年6月から、清水病院では96年6月より実施している。
3)関わっているスタッフの構成
富士病院では医師1名、臨床心理士2名であったが、清水病院では「家族教室委員会」を発足し、医師2名、臨床心理士1名、精神科ソーシャルワーカー3名、看護者10名のスタッフでより緊密な関わりが可能になっている。
4)プログラムの詳細
a)病名告知後、主治医から委員会が作成したパンフレットを用いて導入がなされる。パンフレットには、分裂病に関する説明、教育用図書の紹介とともに、家族教室を行うに当たってのスタッフ側のポリシーが以下のように明示されている。
1.分裂病は脳という一臓器の疾患であり、家族が病気の一次的原因ではない。
2.家族の不安、罪悪感、困惑に共感し、十分な支持を与える。
3.インフォームド・コンセントに則り、病状、治療法等について情報を分かち合う。
4.家族の自助的側面を認め、正しい対処技能を身につけ、再発防止の治療パートナーとしての役割を担ってもらう。セッションは隔週毎1回90分、計5回を1クールとしている。これを2ヶ月毎繰り返し、年3クール行っている。
b)各セッションの詳細
「病因と症状」「治療と予後」「看護者の対応の工夫」「SSTと家族の対応方法」「社会復帰と福祉制度」のタイトルで、各スタッフが分担して講義を行っている。講義の後45分はグループ討議とし(4, 5人)、質疑応答、問題解決に当てている。セッション内で解決しない問題や介入が必要と思われるケースには、個別面接を導入している。
c)モデルにしているやり方は特にない。患者・家族とのコミュニケーションを十分にとり、彼らがもっとも満足し、患者- 家族関係のリフォームに効果があるよう常に工夫している。
5)特に気をつけていること、自分なりに工夫していること
初回には家族会長を交えて、スタッフ、家族の自己紹介を行い、できるだけ、動機づけ、ジョイニングが進むよう工夫している。家族知識質問紙を用いて参加者の問題点を明確化した上、各講義内容は適宜柔軟に変化を持たせている。もっとも特徴的な点として、SSTとの連携を重視していることがあげられる。家族にSSTに参加してもらい、心理教育的家族教室(PFI)で得られた知識を背景に、患者に対する適切な対処技能を模擬体験を通じて習得させるよう努めている。
6)効果の評価法
患者に対しては、対人的効果訓練記録、PANSS、P-F study、Baumなどの心理検査、家族に対してはFMSSでEE評価を行っている。
7)財政的裏づけ
清水病院では家族教室委員会の発足に伴い、運営のための年間予算として病院からサポートを得ている。今後、このようなアプローチに対する診療報酬点数化を希望したい。
8)個別レベルで問題点を明確化した後、 スタッフによる十分なfollow-upを行っている。必要であれば、各セッション別に再参加を促すようにしている。自助的関係作りのため、終了後も参加してもらい新入家族のためにいろいろ意見を出してもらうこともある。
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